(講演要旨)
近年、バイオ医薬分野を先頭に、産業社会からの科学型イノベーションへの期待はかつてなく高まり、その風潮のもと、科学者の起業家精神は着実に顕在化している。その結果、科学コミュニティにおいて科学者を律するノルム(規範)に一定の変化が生まれ、科学者が従来とは異なった活動様式を採用する可能性がある。本発表では、研究目的に使用するマテリアルを相互に無償で提供することを目指すバイオ分野にみられる慣行に着目し、従来、当然とされたコミュナリズムに対する逸脱行動が発生した結果、科学者間の研究協力が様々な形で停滞し、科学の発展を阻害しかねない状況が生まれることを理論的に説明し、分析から導かれる政策的含意を示す。