講演概要
サービス産業は先進国経済において圧倒的なシェアを占めており、その生産性向上は経済全体の成長力を高めるカギとなっている。しかし、サービス産業を対象 とした生産性分析は日本だけでなく海外主要国でも遅れており、その実態は十分解明されていない。特に、近年の経済学では「企業の異質性」が強調されてお り、産業集計レベルの平均値を観察するだけでなく、企業・事業所のミクロデータを用いた分析が不可欠になっている。 こうした中、講師が行ってきた企業・事業所データを用いた実証研究の結果を中心に、サービス産業の生産性の実態、生産性を規定する諸要因、生産性向上の ための課題を報告する。「サービス産業の生産性は低い」という通念には議論の余地があること、都市計画・労働市場制度・企業法制といった基幹的な経済制 度・政策がサービス産業の生産性に大きな関わりを持つことなどを指摘する。
講演者略歴
森川正之氏
独立行政法人 経済産業研究所(RIETI) 理事・副所長
1982年東京大学教養学部教養学科卒業、通商産業省入省。中小企業庁調査室長、経済産業政策局調査課長、産業構造課長、審議官等を経て2011年より現職。この間、埼玉大学、政策研究大学院大学等で教鞭を執る。経済学博士(京都大学)。専門分野:経済政策、産業構造、生産性。 著書: 『サービス産業の生産性分析:ミクロデータによる実証』, 日本評論社, 2014年. 最近の主要論文: “Labor Unions and Productivity: An Empirical Analysis Using Japanese Firm-Level Data,” Labour Economics, 17(6), pp. 1030-1037, 2010; “Economies of Density and Productivity in Service Industries: An Analysis of Personal Service Industries Based on Establishment-Level Data,” Review of Economics and Statistics, 93(1), pp. 179-192, 2011; “Demand Fluctuations and Productivity of Service Industries,” Economics Letters, 117(1), pp. 256-258, 2012; “Productivity and Survival of Family Firms in Japan,” Journal of Economics and Business, 70, pp. 111-125, 2013.