インタラクムナード、パタラポン教授

インタラクムナード、パタラポン 教授/GIST プログラム・副ディレクター

インタラクムナード、パタラポン 副センター長

政策研究大学院大学 教授;イノベーション マネジメントや政策に関わるいくつかの国際的なジャーナルの地域編集者であり、国際編集委員会の一員である。過去には世界銀行、ユネスコ、国連貿易開発会議、経済協力開発機構、国際協力機構、ドイツ開発政策研究所、カナダ国際開発研究所、ASEANとERIA (東アジア)の経済研究所のアドバイザー、コンサルタントを歴任。

GIST副ディレクターの立場からGRIPSや先生のプログラムの強みは何だとお考えですか?

この大学の強みは研究と教育の結びつきが特に強い研究大学だということです。GRIPSの教授陣は研究に相当の時間を費やし、成果をカリキュラムに反映しています。よって学生は政策研究の最前線を学べるのです。それが、この大学の骨格であり、他の大学と大きく異なる点です。
加えて、私を含めて多くのGRIPSの教員は様々な立場で政策に関わっていた経験があります。元行政官もいれば、公的研究機関や政府系機関にいた人もいます。

GRIPSは理論と実践の両方を重視している点でも他の大学と異なります。理論が無いというのは骨格が無いのと同義なわけです。理論無しでも政策に落とし込むことはできますが、いつもうまくいくとは限りません。一方で、実践経験がなければ突拍子もない政策に行きついてしまうでしょう。理論と実践の両方が無ければ、政策は適切でも効果的でもないものになってしまいます。
このプログラムを見れば、いろんなタイプの教授がいることがお分かりでしょう。研究者出身の人もいれば、現場で長く勤務してきた人もいます。GRIPSは理論的な授業と実践に基づいた教育プログラムを提供しています。

先生の研究と、それを授業でどのように生かされているかを伺えますか?

私の主な研究トピックは「開発途上国における科学技術イノベーション政策」です。開発途上国の国家、地域、セクターでのイノベーション・システムの問題を見ています。一般的には国家レベルの科学技術イノベーション政策が研究対象になることが多いですが、国を越えた地域や国の中の地方にもイノベーション・システムは存在します。それを考慮したうえで慎重に研究を進めています。特に、今日では科学技術イノベーションの協働が地域の枠を超えて見られるため、国際的な比較をしています。
私が今やっているプロジェクトのひとつは「東アジアのイノベーションシステムプロジェクトの仲介機関の分析」という2年間プロジェクトです。仲介機関はブローカーのようなものです。機関間の調整をするために多くの政策が必要となります。

この研究のために特に2つの機関に焦点を当てています。ひとつは公的研究機関で、もうひとつは民間企業連盟です。彼らがどのような役割をしているのか、どのような役割をすべきか、この2つの組織に違いはあるのか、といった問題に取り組んでいます。
対象は台湾(発展途上国の中では先進国)とタイ(発展途上国のなかで先進国に追いつこうとしている国)です。これらの国で仲介機関が異なる役割を果たしているとすれば、その違いはどこから来るのでしょうか。両国の食品産業を対象に、多くの機関にインタビューし比較しました。その結果分かったのは、タイでは食品関連の公的研究機関と業界団体が存在すること。一方、台湾では似たタイプの組織があり、タイよりも良く機能しているように見えました。この違いが出てくる理由を考察しました。
まず、両国の組織のミッションの定義の違いに着目しました。例えば、一方の国の組織は仲介に関するあらゆる業務がすべてミッションに入っているのに対し、もう片方の国では特定の機能に特化している。加えて、人材の定義が違うことも分かりました。この2つの要因が効いているように思います。

私はこういった研究結果を議論の題材などの形で教育へ還元しています。学生の出身国ではこのような仲介機関があるか、といった切り口で尋ねてみることもありますし、ある機関は他と比べてなぜ効果的なのか議論することもあります。これは、研究と教育の密接な関係を示す一例です。
GISTプログラムの良い点は、授業で国ごとの事例を比較できることです。学生は多くの国から来ており、多くは中堅の政策立案者です。彼らは他の学生と議論したがっています。学生は他の学生から学び、我々教授は彼らから学ぶことが出来ます。

国際比較の重要性を強調されますが、国を超えた研究協力をどのようにしていますか?

私の場合はASEANおよび東アジア経済研究所(ERIA)で仕事をしています。ここ10年はプロジェクトリーダーとしてアジアの国々でのイノベーション活動について調査を進めています。例えば、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム(ホーチミンとハノイ)といった5つの違った地域で企業を対象にした調査も行ってきました。特定の業種に限っての調査も進めています。例えば、今年は自動車業界に焦点を当てましたが、来年はエレクトロニクスを扱う企業を対象にします。
このプロジェクトでは毎年、フィリピン、ベトナム、タイ、その他の国々の国家チームと会合を持ちます。私が骨格を作り、全体の要約、結論、政策への影響を考察したうえで、ERIAに報告書を提出します。国を超えての研究協力の分かりやすい例です。
効果的な研究を行うには、長期的にやることが大事です。何が起こっているか、時を経ての変化はどうか、を捉えることが大事です。物事を深く考察しようとしているのです。

なぜこのような研究に興味をもたれたのでしょうか?

このところ、科学技術がどのように生活の質をよくするのか、人々の幸福にどのように貢献するのか、といった切り口で語られることがあります。科学技術イノベーション政策はもっと人々に焦点を当てるべきだ、という考えが私の研究への動機です。
人々に焦点を当てるには、ステークホールダーを巻き込まなければなりません。政策立案は行政官だけではなく、私企業、大学、地方自治体、コミュ二ティといったすべてのステークホールダーの意思の疎通に基づいていなければなりません。学生時代からのこういった考えは仕事をするようになって一層強くなりました。
私は8年間、行政官兼政策研究者でした。後に、タイで最大の公的研究機関になる国立科学技術開発庁(NSTDA)で仕事をしました。その間、政府主導による科学技術国家計画を見、他の重要な政策案件に従事しました。また、他の政府機関や私企業とどのように仕事をすればよいかを学びました。
以上のような経験に基づいてGRIPSにいます。授業では、理論面だけでなく、実践面も語っています。どんな政策がうまくいっているか、そうでないかを知っていますし、その理由も知っているからです。

先生の研究と教育の意義を伺えますか?学生が元の職場に戻ったときにどのようなことを期待されますか?

研究は政策とリンクしているべきです。研究の成果は政策立案者へ届けるべきで、そうすることにより実際に変化が起きて欲しいと願っています。
私の経験から言えば、発展途上国の政策立案者には多くの制限があります。彼らは変化を必要としていますが、実際に起こすのはとても難しいことです。私は変化を起こす最良の方法は理論と実践を理解した次世代の政策立案者の育成だと思います。これが大学へ職を求めた理由です。特にこれから先長い将来のある中堅の政策立案者を教育したいです。これはGISTのミッションでもあります。
このプログラムには日本人と外国人の政策立案者がいます。彼らはお互いをよく理解し、お互いの政策を一緒にベンチマークし、人間的な繋がりを持つことが出来ます。同窓会ネットワークも活性化しており、異なる国々の同窓会間での協力も始まっています。GRIPSの学生たちは将来、多大なる貢献をすると思います。

現在関わっているプロジェクト

Publication in the past five years (2015-2019)

Books

  • ①Intarakumnerd, P. (2018). Mismanaging Innovation Systems: Thailand and the Middle-income Trap, Routledge: Oxford and New York.

Journal articles and book chapters

  • 1. Intarakumnerd, P. (2019), 'Thailand's Middle-Income Trap: Firms' Technological Upgrading and Innovation and Government Policies,' Seoul Journal of Economics, 32 (1). 107-135.
  • 2. Lee, K., Wong, C., Intarakumnerd, P. and Limapornvanich, C. (2019), 'Is the Fourth Industrial Revolution a window of opportunity for upgrading or reinforcing the middle-income trap? Asian model of development in Southeast Asia,' Journal of Economic Policy Reform,
  • 3. Intarakumnerd, P., and Liu, Mengchun, (2019). 'Industrial Technology Upgrading and Innovation Policies: A Comparison of Taiwan and Thailand,' in K. Tsunekawa and Y. Todo (eds.), Emerging States at Crossroads, Emerging-Economy State and International Policy Studies, Springer: Tokyo, pp. 119-143
  • 4. Intarakumnerd, P. and Goto, A. (2018), 'Role of Public Research Institutes in National Innovation Systems in Industrialized Countries: The Cases of Fraunhofer, NIST, CSIRO, AIST, and ITRI,' Research Policy 47 (2018) 1309-1320.
  • 5. Intarakumnerd, P., Doner, R., Ritchie, B. (2018), 'Universities in Thailand's national innovation system : their contributions on industrial and technological Upgrading,' in VV. Krishna (ed). Universities in the National Innovation Systems: Experiences from the Asia Pacific, Routledge: Oxford and New York, pp. 305-327.
  • 6. Intarakumnerd, P. (2017). 'Industrial Innovation in Thailand: The Electronics, Automotive and Seafood Sectors,' in Khoo, B.T., Tsunekawa, K. and Kawano, M. Southeast Asia Beyond Crises and Traps, Palgrave Macmillan: Cham, Switzerland, pp. 167-192.
  • 7. Intarakumnerd. P. (2017). 'Human resource management and coordination for innovative activities in production networks in Asia: a synthesis', Asian Journal of Technology Innovation, 25:2, 199-205, DOI: 10.1080/19761597.2017.1385957
  • 8. Intarakumnerd. P. (2017). 'Upgrading in Global Value Chains: the Cases of High, Mid and Low Technology Sectors in Thailand.' Asian Journal of Innovation and Policy 6(3):333-353. DOI: http//dx.doi.org/10.7545/ajip.2017.6.3.332
  • 9. Pittayasophon, S. and Intarakumnerd, P., (2017). 'University and industry collaboration in Japan and Thailand: influence of university type', Asian Journal of Technology Innovation, 25:1, 23-40, DOI: 10.1080/19761597.2017.1302399
  • 10. Intarakumnerd, P. (2017). 'Thai automotive industry: International trade, production networks, and technological capability development,' in L.Y. Ing and F. Kimura (eds). Production Networks in Southeast Asia, Routledge: Oxford and New York, pp. 161-182.
  • 11. Intarakumnerd, P. (2016). [Review of the book Development and Modern Industrial Policy Practice: Issues and Country Experiences by Jesus Felipe (ed)]. Asia Pacific Economic Literature, 30(2): 121-123. doi: 10.1111/apel.12156
  • 12. Intarakumnerd, P. and Goto, A. (2016). 'Technology and Innovation Policies for SMEs in Asia,' in P. Vandenburg, Chantapacdepong, P. and Yoshino, Y. (eds.) SMEs in Developing Asia: New Approach to Overcome Market Failures, Asian Development Bank Institute, Tokyo, Japan, pp.24-49.
  • 13. Pittayasophon, S. and Intarakumnerd, P., (2016). 'University-Industry Collaboration in Thailand: Firm Characteristics, Collaboration Modes and Outcomes', Institutions and Economies, 8(3): 37-59.
  • 14. Pittayasophon, S., Intarakumnerd, P., Sumikura, K., Saito, H., and Suzuki, J. (2016). 'Firm Characteristics and Modes of University-Industry Collaboration: Cases of Japan and Thailand,' STI Policy Review, 7(1): 17-39.
  • 15. Intarakumnerd, P., Chairatana, P. & Chaiyanajit, P. (2016). 'Global production networks and host-site industrial upgrading: the case of the semiconductor industry in Thailand, Asia Pacific Business Review, 22(2): 289-306.
  • 16. Intarakumnerd, P. and Techakanont, K. (2016). 'Intra-industry trade, product fragmentation and technological capability development in Thai automotive industry,' Asia Pacific Business Review, 22(1):65-85
  • 17. Pittayasophon, S. and Intarakumnerd, P. (2015). 'Development Path of University and Industry Collaboration (UIC) Activities: Case of Japan and Thailand,' Asian Research Policy, 6(2): 47-65
  • 18. Intarakumnerd, P. Chairatana, P., and Kamondetdacha, R. (2015) 'Innovation System of the Seafood Industry in Thailand,' Asian Journal of Technology Innovation, 23(2), 271-287.
  • 19. Sutthijakra, S. and Intarakumnerd, P. (2015). 'Role and Capabilities of Intermediaries in University-Industry Linkages: A Case of Hard Disk Drive Industry in Thailand,' Science, Technology and Society, 20(2): 182-203.
  • 20. Intarakumnerd, P. (2015). 'Comment on "Escaping the Middle-Income Trap in Southeast Asia: Micro Evidence on Innovation, Productivity, and Globalization" Asian Economic Policy Review 10: 148-149.
  • 21. Intarakumnerd, P. and Charoenporn. P. (2015). 'Impact of stronger patent regimes on technology transfer: The case study of Thai automotive industry', Research Policy, 44(7):1314-1326.
  • 22. Intarakumnerd, P. (2015). 'Seven Unproductive Habits of Thailand's Ineffective Technology and Innovation Policies: Lessons for other Developing Countries,' Institutions and Economies, 7 (1), April 2015, pp. 80-95.
連絡先

政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム(GIST)
GRIPS Innovation, Science and Technology Policy Program (GIST)

〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1 (アクセス
メール:gist-ml@grips.ac.jp
ページトップ RSS

当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、政策研究大学院大学としての見解を示すものではありません。また、当サイトのコンテンツを転載される場合は事前にご連絡下さい。