角南 篤 客員教授

角南 篤 学長特別補佐・客員教授

角南 篤 学長特別補佐・客員教授

1988年、ジョージタウン大学School of Foreign Service卒業、89年株式会社野村総合研究所政策研究部研究員、92年コロンビア大学国際関係・行政大学院Reader、93年同大学国際関係学修士、97年英サセックス大学科学政策研究所(SPRU)TAGSフェロー、2001年コロンビア大学政治学博士号(Ph.D.)取得。2001年から2003年まで独立行政法人経済産業研究所フェロー。2003年政策研究大学院大学助教授、2014年教授、学長補佐、2015-2018年内閣府参与(科学技術・イノベーション政策担当)、2016年副学長、2019年学長特別補佐(現在に至る)。
その他、文部科学省 科学技術・学術審議会委員、外務省 科学技術外交推進会議委員、内閣府総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会委員、公益財団法人笹川平和財団理事長等。

先生は先端科学技術政策を中心に研究されてこられたわけですが、そのきっかけは?

私の専門は「比較政治経済政策論」といい、一国の政治のうちでも経済と深い関わりのある政策を、他国の政策との比較を通して明らかにしていく研究分野です。その中で、先端科学技術政策に興味を持ったきっかけは、1980年代に、ワシントンのジョージタウン大学で政治学を勉強していたときの経験です。当時は、半導体を中心とした日米技術摩擦がすさまじい頃でした。子供のころから日本とアメリカは仲がいいと思ってきたのに、日本人というだけで敵視されるし、日本ががんばってつくりあげた先端技術はひどくたたかれるし、という状況でした。どうしてこんなことになるのか、そこにはなにか本質的な問題があるはずだと考えて、先端技術政策を研究するようになりました。
博士論文では、レーガン政権とサッチャー政権の半導体政策を比較しました。どちらも、国家は市場にあまり介入しないと標榜していたのに、先端技術には、「安全保障」などの理由をつけて徹底的に介入していました。その矛盾の実態を解析したのです。

その研究成果を生かして、日本の先端技術政策の研究に取り組まれたのですね?

2001年に、ちょうどできたばかりの独立行政法人経済産業研究所(RIETI)に入れていただきました。RIETIは経済産業省が所管する政府系シンクタンクで、経済産業省の政策立案を支える立場にあります。メンバーの半分は私のような専門家で、残り半分は行政官でした。行政官といっしょに政策立案の現場で研究ができ、大きな学びがありました。
日本を取り巻く環境として、最初に注目したのが、当時台頭してきた中国でした。まだ、「先端技術」という側面で中国を研究する人が少ない中、中国の最先端技術の実態や、それらが生まれるメカニズムを研究しました。科学技術振興機構の中国総合研究センターで研究したり、清華大学、北京大学などで実地調査を行ったりもしました。そうした中で、中国では政府が市場をつくり、そこで市場メカニズムを働かせているといった、中国の先端技術政策の特徴を明らかにしてきました。

技術だけでなく、科学にも注目されるようになったのはなぜですか?

ここ10~20年の間に、技術に対する科学の影響が大きくなってきたからです。例えば、医療、材料、ITなど、多種多様な分野の技術と、大学などの科学の成果が直接つながる割合が増えています。当然、政策の中身も変わってくるわけで、科学をどう活用するか、科学をどのように技術開発につないでいくかが政策上の大きな課題となってきました。そこで、科学技術政策全般を研究するようになりました。
さらに、研究成果に基づく実践として、宇宙開発などのビッグサイエンスを中心とした政策決定のプロセスに関わるようにもなりました。内閣府参与として、第5期科学技術基本計画(2016~2020年度)の策定に関わったほか、第6期に向けての議論にも参加しています。
学生たちには、こうした生の体験や情報をベースにして、政策決定過程を理解してもらえるよう努めています。日本では、政策決定の際に、丁寧な調整や説明のプロセスが必要で、そのプロセスは大切にしていかなければならないということも、学生には教えています。私の教えた学生たちの中から、政策決定過程の研究者や、実際に政策決定にかかわる人材が育ってくれたらと願っています。

革新的研究開発推進プログラム(ImPACT: Impulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program、2014~2018年度)の立案にも、多大な貢献をされたとうかがっています。

ImPACTは、「ハイリスクだが、実現すればインパクトの大きい技術を開発する」プログラムで、アメリカの国防総省高等研究計画局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)の研究のやり方をモデルとしています。私は博士論文のときにDARPAについて調査して以来、DARPAに関心を寄せてきたので、ImPACTの立案の際に、その知識が生かせたのではないかと思います。
ImPACTは、プログラムマネージャーに、予算の使い方とメンバーの人選を自由にやってもらうところが大きな特徴でした。成果をあげるには、お金だけでなく「人」が重要だという発想からです。とはいえ、ハイリスクな技術開発なので、失敗の確率も高いですが、その失敗に学ぶ体制も整えていました。ただ、ハイリスクなテーマに取り組むには、5年間では短かったので、後継に当たる「ムーンショット型研究開発制度」が2019年度に開始されたことはよかったと思います。

これまでの研究と実践を踏まえて、今後の日本の先端科学技術政策のあり方についてのご意見をいただけますでしょうか。

日本では、政策を強力に推進することが難しい。現実には、各省の課長レベルでたくさんの政策が立案され、それらのボトムアップで国全体の政策が決まっていきます。内閣府はコーディネートするのが仕事で、国全体を引っ張る力にはなかなかなれません。やはり、最終的には、国益のもとに政治主導で20年後、50年後を見据えた政策を打ち出していく必要があると思います。
また、プロジェクト研究では、費用対効果を求める国民の声もありますが、「科学」については、国の支出はパトロネージュだという見方も必要だと思います。先端科学技術の振興だけでなく、科学館、動物園、図書館なども含めて、「知の拠点」を充実させ、科学という文化への理解を醸成することが、日本の科学基盤を強めていくことに通じるのではないでしょうか。

業績・担当プロジェクト

http://www.grips.ac.jp/list/jp/facultyinfo/sunami_atsushi/2011nend/
連絡先

政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム(GIST)
GRIPS Innovation, Science and Technology Policy Program (GIST)

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