学生・修了生の声 VOL.3

エルサベリ_エルハサンさん

2017年9月 科学技術イノベーション政策プログラム(GiST)博士課程修了(学位:博士(政策研究))

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一橋大学イノベーション研究センター 特任講師。2012年 The American University in Cairo卒業、2013年 Higher Institute for Islamic Studies, Egypt修了(Two-year Graduate Diploma, イスラーム学)、2014年 The American University in Cairo(修士号取得, 物理学)、2017年 政策研究大学院大学(博士号取得, 政策研究)、2017~2018年 政策研究大学院大学 科学技術イノベーション政策プログラム ポストドクトラル・フェローを経て、2018年より現職。

GRIPSでの研究

インターネット初期から20年以上にわたり、学術文献へのオープンアクセス(OA)について課題等が調査され、議論されている。それらの研究は主に、OAが学術コミュニティ自体に与える影響、例えば、OA論文は有料アクセスの論文と比べて引用数が増えることなどに焦点が当てられている。一方、OAの学術コミュニティ以外への影響に焦点を当てた研究については、まだ不十分であった。そのため、実務家、政策立案者、患者や市民による、OA論文の学術コミュニティ以外での利活用を調査・分析し、その可能性を、科学政策立案者ならびに研究者に向けて提言した。

GRIPSの博士課程へ進学を考えたきっかけを教えてください

私は、エジプトのカイロ・アメリカン大学で物理学の学士号と修士号を取得しています。そのまま物理学の博士号取得に向けて研究を続けることも考えたのですが、残念ながらエジプトでは研究施設や機器が充実していないので、当時取り組んでいた研究をそのまま続けることは困難でした。物理学の研究者としてのキャリアを考えるならば他国に渡るしかありません。実際に多くの科学者がエジプトや他の発展途上国から先進国へ移動し研究を続ける道を選んでいます。

同じ頃に、科学技術イノベーション政策(以下、STI政策)という分野があることを知りました。調べてみると、発展途上国のSTI政策では、科学技術を使って事業を行う企業を通して経済発展に結びつけることの重要性が指摘されていました。また、科学技術のエコシステム全体を視野に入れた施策も求められていました。

STI政策の一端に触れたことで、自分のすべきことが見えた気がしました。現代社会は知識をベースにした経済で回っているため、科学技術力の低い国では強い経済や豊かな生活にたどり着くのは難しい。エジプトも含め、優れた科学技術政策が行われているとは言えない国がほとんどです。ということは、私がSTI政策を学ぶことで、いつかエジプトの科学技術の状況を改善できるのではないか。少なくとも科学者が選択の余地なく自国を去らねばならない現状を変えられるのはないかと考えました。

当時、STI政策を教えるプログラムは非常に少なかったのですが、私は日本人の友人を通じてGRIPSの存在を知りました。その友人は、カイロのアメリカン大学で共に図書館のアルバイトをしていた交換留学生でした。STI政策を学びたいという私の相談に乗ってくれ、、公共政策に特化した大学が日本にあることを教えてくれたのです。Webサイトで確認すると、GRIPSには、STI政策に特化したプログラムと、科学技術を開発に活かすための知識および経験を持つ教員が揃っていました。

実は、米国の大学で科学政策を学ぼうといくつか受験してみたのですが、公共政策の研究経験が無かったので受け入れてもらえませんでした。しかし、GRIPSは公共政策研究の経験の有無に関わらず、「科学者やエンジニアなどさまざまな経歴を持つ人々を受け入れることによって、プログラムを豊かにしたいと思っている」という趣旨の手紙をくれたのです。非常に幸運でした。

GiSTプログラムの魅力はどういったところにあると感じましたか? また、何を学びましたか?

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まずは、STI政策に関するさまざまな学問分野の知識が得られることです。経済学や物理学などと異なり、STI政策は体系化された一学術分野ではありません。異なる分野にまたがる学際的なものです。そのためSTIプログラムは多分野の知識が得られるよう設計されています。経済学や公共政策、社会学、科学技術に関わる諸問題、法律といったSTI政策に必要な知識を幅広く学びました。

もう1つの魅力は、実際の政策立案の経験に根差したノウハウから学べることです。例えば、私を指導してくれた隅蔵康一先生のコースでは、一般的な知識だけでなく、大学や産業界のコラボレーションに関する具体的な事例、特定の新しい科学技術にまつわるリアルな話を聞かせてくれました。これによって、この種の領域における理論構築とノウハウ蓄積の両方がどのように行われているのか、そして実社会の中でSTI政策をどのように実践するかについて、具体的に学ぶことができました。

現在どのようなことに取り組んでいますか?

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一橋大学イノベーション研究センターで特任講師として働いています。取り組む研究の1つ目は、大学が日本の財団から研究資金を調達する際のメカニズムを調べるもの、2つ目は、発展途上国における大学と産業界との連携の進め方に関するものです。後者は、STI政策を学ぶに至った最初の動機と関連しています。大学と産業界のコラボレーションは知識を経済面で活用するために非常に重要です。これは、大学時代にデータ不足で研究できなかったことでもあり、簡単ではありませんが、強い意志を持って取り組んでいきたいと思っています。

今後の目標は、やはりGRIPSで学んだことを活かしてエジプト政府のために働くことです。そのためにも、まずは世界銀行やユネスコ、国連といった国際機関で経験を積みたいです。その上でエジプト政府のポストに着くことで、国際的な(STI政策の)専門家として真の影響を与えられるのではないかと思っています。それ以外に、アカデミアや民間セクターで働くという選択肢ももちろん残しています。

連絡先

政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム(GIST)
GRIPS Innovation, Science and Technology Policy Program (GIST)

〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1 (アクセス
メール:gist-ml@grips.ac.jp
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