2005年3月 武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部経営工学科 修了。民間企業のシステムエンジニアとして、情報システムの開発・運用業務に従事後、2010年10月に総務省入省。放送や情報通信などを担当する部署を経て、現在は、情報流通行政局情報通信作品振興課にて、放送コンテンツの製作取引に関する事務を担当。2020年4月に科学技術イノベーション政策プログラム修士課程に入学。2021年3月修了。
GRIPSでの研究
修士論文テーマ:
デジタルトランスフォーメーションを加速させる情報通信行政の在り方についての一考察- 外部人材の活用を通じた日本のDX化の加速 -
日本の様々な地域でデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるために必要な情報通信政策(ICT政策)の要因について、政策と事例を通して検討。スマートシティを推進している自治体や自治体外部の関係者へのインタビュー調査から、地域でDXを加速させるためには「外部人材の活用」が重要であることを明らかにした。また、うまく外部人材を活用しデジタル化を進めている自治体は、外部人材を活用して「ビジョン形成」「マネタイズ」「住民理解」「DX化の浸透」という4つの視点を明確にし、その雇用にあたっては、兼業を前提としたサブスクリプションのような勤務条件が望ましいことがわかった。ただし、自治体が外部人材をうまく活用するためには、自治体と外部人材の役割を明確にする必要があり、その実現には内部人材育成を通じた自治体の吸収能力(absorptive capacity)の向上が必要であることを提言した。
総務省での実務を通じて、日々変化する技術や環境を踏まえて政策を立案する必要性を感じており、「科学技術イノベーション政策」の関する知識を体系的に学びたいと思ったのがきっかけです。また、学ぶのであればアカデミックな観点だけではなく、実務的な観点で政策について学びたいと考えており、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の構成員でもある上山教授や各省の審議会などで活躍されている教員が多いGISTプログラムを志望しました。
GISTプログラムの魅力は、2つあると思っています。
1つ目は、カリキュラムが充実している点です。科学技術イノベ―ションに関するこれまでの歴史や政策の評価方法、産学連携政策など、幅広い内容の講義を受講することができます。更に、教員には、政府における審議会などにおいて現役で活躍されている方々が多いため、政策の裏に踏み込んだお話を聞けることが魅力です。
2つ目は、学びの環境として、同業の公務員だけでなく、研究機関や民間企業で働く社会人、アジア諸国を中心とした留学生と共に学べる点です。2020年度は新型コロナウィルス感染症対策もあり、留学生とはオンラインでのつながりのみとなりましたが、それでも授業を通じた議論の中で、科学技術イノベーション政策に対する視点の違い等、多くの気付きを得ることができました。
私が入学試験を受けた時は、一次試験が論文試験、二次試験が面接試験という構成となっていました。論文試験については、試験の数か月前から過去問を解いて対策しました。また、近年の科学技術イノベーションに関する政策の動向は把握するように努めました。面接試験対策としては、どんな質問がきても答えられるように、これまでの実務経験、GISTプログラムで何を学びたいか、修士論文として何を研究したいかを中心に整理しておきました。
科学技術に関する海外の論文からこれまでの研究事例を学ぶ「Science Technology and Entrepreneurship」、論文を中心とする書籍の要素を分析する手法(計量書誌学)について学ぶ「Bibliometrics and applications」、科学技術政策に関する基本的な概念や理論とその指標に関する基本的な知識を学ぶ「科学技術行政システムと指標」、脱炭素化や水素社会などの日本におけるエネルギー政策について学ぶ「Energy Policy in Japan」などの授業を受講しました。
最も印象に残っているのは「公的機関からのイノベーション創出」という授業です。この授業は、「科学技術イノベーション政策・経営人材養成 短期プログラム」という社会人向けプログラムを構成する授業の1つにもなっており、正規学生以外の社会人も参加することができる土曜日の授業です。科学技術イノベーションを切り口に、スタートアップの経営者やベンチャーキャピタル、イノベーション研究をしている教授など毎週異なるゲストスピーカーの話を聞けました。今年は新型コロナウィルス感染症対策のためオンライン形式での講義でしたが、様々なバックボーンを持つ受講者から多くの意見や質問が飛び交う授業は毎回新たな発見がありました。
英語の授業は、日本語の授業よりも予習や復習に時間はかかりましたが、プレゼンテーション力などを鍛えることができましたし、留学生の視点はバックグランドの違いもあり、大変刺激となりました。
私は1年で修士課程を修了させるコースであったため、春夏学期で修了に必要な授業のほとんどを履修し、残り半年で研究論文を執筆しました。GISTプログラムでは、リサーチセミナーという講義を通じて、入学当初から修士論文のテーマや進捗状況について教員と相談する場が設けられております。そのため、修士論文を執筆する中で、一人で悩み込んでしまいそうになることもありましたが、教員の方々にアドバイスをいただきながら進めることができました。GISTプログラムには、客員教授を含めると11名の教員が在籍しているため、それぞれの専門の観点からアドバイスをいただくことで、自分だけでは気付くことができなかった視点で研究を進めることができました。
科学技術イノベーション政策は、今後、日本経済の発展を担う重要な政策の一つです。この分野は、環境変化が激しく、日々最新の情報にアンテナを張っておく必要もあります。加えて、これまでの歴史や研究の評価、現実に起きている問題の分析も重要です。GISTプログラムには、所属する会社や自治体などで環境変化を実務にどう活かすか、議論を通じて何らかの結論を導くことができる場があるため、実践的な思考力を磨くには大変良い大学だと感じています。
政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム(GIST)
GRIPS Innovation, Science and Technology Policy Program (GIST)