学生・修了生の声 VOL.4

小笠原憲二さん

2019年9月 科学技術イノベーション政策プログラム(GIST)修士課程修了 (学位:Master of Public Policy)

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2007年3月 東京工業高等専門学校 専攻科 電気電子工学専攻 修了。2007年4月 経済産業省 入省。原子力発電所事故収束対応室等を経て、現在、経済産業政策局企業行動課にて組織再編税制やベンチャー支援税制等、税制の改廃に関する事務総括を担当。 2018年4月から科学技術イノベーション政策プログラム修士課程に入学。2019年9月修了。

GRIPSでの研究

修士論文テーマ:イノベーションの社会的インパクトに関する考察:物流へのロボット導入を事例として

イノベーションの効果を検証する方法として、生産性向上に関するアプローチと社会的インパクトに関するアプローチについて、IT革命における先行研究を参照しながら、物流へのロボット導入の事例を通じて検討。イノベーションの効果は、生産性関連では労働の質の向上、作業効率の上昇、人材の確保、企業価値の増加などを、社会的インパクトでは女性や高齢者の社会進出、新サービスの創出によるライフスタイルの変化、新技術の相乗効果を通じた更なるイノベーション創出などを生み出す可能性がある。

GiSTの修士課程へ進学を考えたきっかけを教えてください

私は高等専門学校専攻科で、エンジニアリングや電気・電子といった"モノづくりそのもの"を学んできた技術系の人間です。経済産業省に入省して今年で12年目になりますが、もっと大きな仕組みづくり、業務で必要とされる「経済の知識」などを新たに得ようと、学びの場を求めてGiSTプログラムにたどり着きました。職場の国内留学制度を使って学習・研究に励みました。 GiSTプログラムには、私の関心分野であった「イノベーションマネジメント」の講義があり、その担当教員である鈴木潤先生に論文指導をお願いしました。

私の立場は、イノベーションを促進する政策を作る側です。日本も含めた多くの国で、社会全体の仕組みを大きく変えうる破壊的なイノベーションに注目が集まっており、関連する政策も多く打ち出されています。例えば、ロボット分野では日本経済再生本部から「ロボット新戦略」が出されていますし、「新しい経済政策パッケージ」の中ではAIやビッグデータも含め生産性を向上させる鍵の1つとして言及されています。

 しかし、イノベーションの定義はふわっとしており、捉え方も関わる人々の立場や考え方によって異なるように感じます。政策がどのようにイノベーションへ波及していくのか、経路や波及効果に対する意見もさまざまでしょう。それらを踏まえて、GiSTプログラムで学んだ、社会の中でいかに科学技術によるイノベーション政策を実装し、世の中を変えていくべきか、また、評価すべきかを、実務に活かしたいと思っています。

イノベーション政策の実装に向けて学びを重ねる中で、思うこと、感じることはありますか?

破壊的なイノベーションには、それを起こす「種」が必要です。多くの人たちと同じように、私もその「種」がIoTやAIといった情報技術、そしてロボットにあると考えています。ただし、ロボットを通じて何かしよう、ロボットを普及させようという訳ではなく、資源が少ない日本が抱える、高齢化や労働力不足などの課題に対して、どのような場面でロボットが貢献するか、ロボットをどう活用するかを見通す必要があるという考えです。新たな技術がどのようなイノベーションをもたらしうるのかを俯瞰する、イノベーションの社会的なインパクトを見定めてみたいのです。これまで日本政府が行ってきた施策の効果は中長期的に現れてきます。私はこの成果の「見える化」ができればいいと思っています。

例えば、90年代以降さまざまな分野でIT機器が導入されてきましたが、これによる生産性への影響が経済的な統計に表れてこないことが議論になりました。生産性は資本と労働力を投入した結果、どれだけ生産量が伸びたかを測る指標です。IT機器の導入にはただ機器を買ってくるだけではなく、それに伴う新たな人材の雇用や組織の改編が必要になる場合が多いのが実際です。結果として、統計上は生産性の伸びがすぐに表れないことが多いのだと分かりました。こういった研究と同様に、ロボットをはじめとした新たな技術によるイノベーションの経済的・社会的なインパクトを分析することがイノベーション政策の検討に必要だと考えています。

GiSTプログラムでは、イノベーションの評価手法や、政策の変化に対応できる広い思考を得ることができました。例えば、ロボットを作ることに関わる事業者には大企業も中小企業もあり、企業規模や事業内容(例えば、部品を作る、素材を開発するなど)の違いに応じた政策的な支援が必要です。作る側・使う側といった立ち位置の違いも考慮すべきでしょう。税制的、法的な規制緩和が求められる場面も考えられます。新しい政策を考える際に、歴史的背景や諸外国との比較など、GiSTプログラムで学んだ多角的な視点で物事を考える力が役に立ちます。

GiSTプログラムの大きな魅力は、科学技術イノベ―ションに特化したカリキュラムで構成されている、凝縮された科目が用意されていることです。また、海外経験豊かな教員の方々が多く、政策に関する知識やバックグラウンドもお持ちです。このことは、特に私のような政策立案側の実務者にとっては大変マッチしていました。 また学ぶ空間としてもGRIPSの環境は申し分ないものです。物理的な面としてキャンパスは交通アクセスに恵まれた東京都内・六本木にありますし、精神的な面としては教員と学生、また学生同士の距離感が近いく、在学生の国際色も豊かで、他国と日本とのイノベーションの捉え方を比較できることはメリットです。気軽に自由なディスカッションが行える雰囲気ですから、日々多くの気づきをGRIPSで得ています。

目先の利益だけでなく、大きな枠組みで経済や産業を捉えること、そして、自分の関心事に振り返らせることができる人材を目ざして、ここでの学びを活かしたいです。

連絡先

政策研究大学院大学科学技術イノベーション政策プログラム(GIST)
GRIPS Innovation, Science and Technology Policy Program (GIST)

〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1 (アクセス
メール:gist-ml@grips.ac.jp
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